好きな仕事だからこそ、最近のキャバクラに違和感がある

現場哲学・マインド

水商売が好きだ。これは今でも変わらない。

楽な仕事だとは思っていない。人間関係もある。お金も絡む。感情も絡む。昨日まで笑っていた人間が、今日は敵になることだってある世界だ。

それでも、俺はこの仕事が好きだった。だからこそ、最近のキャバクラを見ていると、少し違和感を覚える。

「見えているもの」が現実のすべてなのか

SNSを開けば、華やかなキャバ嬢たちが並んでいる。

整形、美容、ブランド。シャンパン、テキーラ。売上、ランキング、太客。

どうすれば自分を魅力的に見せられるのか。どうすれば、より金を使ってくれる客を掴めるのか。

それ自体を否定するつもりはない。売れるために努力することは、商売をする上で当然のことだ。

ただ、気になることがある。それが「今の水商売のリアル」として語られていることだ。

SNSで目立っている一部が、夜の街全体を代表しているように見える。だが、実際の街を見ていると、そんなに単純ではない。

 本当にキャバクラブームなのか?

 街に飲み客が溢れているのか?

 一晩で何十万、何百万と使える客が、そこら中にいるのか?

少なくとも、俺にはそうは見えない。むしろ普通に働き、普通に生活している男性にとって、キャバクラそのものが生活から遠い存在になっているようにも感じる。

それでもSNSでは、それが当たり前のように流れてくる。

「経済的に余裕のある男がいい」

「時間に余裕のある男がいい」

「精神的に余裕のある男がいい」

そういった強い言葉とともに、特定の価値観が拡散されていく。

誰がどんな相手を求めるのかは自由だし、そこを否定するつもりはない。俺が引っ掛かるのはその先だ。影響力のある人間の価値観が、いつの間にか「世の中の普通」に見えてしまうことだ。

数字と外見が評価される時代の違和感

これはキャバクラだけの話ではない。マッチングアプリでも、SNSでも同じだ。

フォロワー数、再生数、いいね、年収、職業、外見。人間そのものより、「人からどう見えるか」が評価される場面が増えている。そして、それを見た人間が自分自身まで作り変えていく。

もっと綺麗に。もっと稼いで。もっと有名になって。

誰かが作った「魅力的な人間像」を、みんなで追いかける。俺が感じているのは、そうした今の時代の違和感だ。

昔が良かったと言いたいわけでも、昔に戻れると思っているわけでもない。働き方も、男女の関係も、金の使い方も、出会い方も変わった。情報の流れ方そのものが変わったのだから、今のキャバクラが昔と違うのは当然だ。

違和感の正体は、変化そのものではない。

「SNSに映っている世界が、現実のすべてだと思ってしまうこと」にある。

そこでの成功は、その人の現実であって、自分の現実に落とし込む必要はない。

水商売の本質は「人間臭さ」にある

水商売だって商売だ。売上も、客単価も、利益も大事だ。

効率やコスパを求めることが、悪だと言うつもりもない。

ただ、ふと思う。

「損をして得を取れ」なんて言葉が、まるで大昔の教えのように追いやられてしまっていないだろうか。

目先の売上や数字だけを追いかけ、損をしない立ち回りばかりに気を取られる。だが、それだけになったら、この仕事の大切な部分を失ってしまうはずだ。

俺が好きだった水商売には、もっと人間臭い部分があった。

 客の話を聴く。

 くだらない話で笑う。

 誰にも言えない悩みを吐き出して帰る。

 何かを抱えている人間が、少しだけ楽になって帰っていく。

一見すると効率が悪くて「損」に見える時間かもしれない。だが、その時間があるからこそ、切っても切れない深い信頼関係という「大きな得」が生まれていたはずだ。

キャストが売れるために知恵を絞る。黒服が現場を作る。店長が人を育てる。経営者が仕組みを作る。そこには、売上だけでは測れないものがあった。

綺麗事だけでは商売はできない。だから俺は、「人」と「数字」を対立させるつもりはない。重要なのは、その「順番」と「構造」だ。

店は、人でできている。キャストだけでも、黒服だけでも、経営者だけでも成立しない。人と人がいて、それを繋ぐ人間がいて、支える組織がある。その構造があって初めて店になる。

変化の中で、何を残し、何を新しくするか

俺は長くこの世界を見てきた。だから今の変化も分かるし、これから夜の街がどう変わっていくかも、ある程度見えている。

戻る必要も、戻ることもできないのなら、考えるべきは一つだ。

変わっていく時代の中で、何を残し、何を捨て、何を新しく取り入れるのか。

華やかさを否定する必要はない。SNSも、稼ぐことも否定しない。ただ、その中で絶対に忘れてはいけないものがある。

「人間」だ。

どれだけ時代が変わっても、店を作るのも、客を楽しませるのも、キャストを育てるのも人間だ。組織を壊すのも人間なら、立て直すのも人間だ。

だから俺は、水商売が好きなんだと思う。

華やかな世界だからでも、金が動くからでもない。人間がむき出しになる世界だからだ。

どれだけ世界の見え方が変わっても、その本質だけは変わらない。

だからこそ、現在のキャバクラに違和感がある。そして、その違和感をただ嘆くつもりもない。

時代は変わる。ならば、その変化を理解した上で、これからの水商売をどう作るのか。

俺は、そっちを考えている。

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