キャストが客を選ぶ。
自分にとって都合のいい相手とは連絡先を交換する。
面倒そうな相手や、すぐに売上につながりそうにない相手とは、最初から関係を築こうとしない。
もちろん、誰とでもつながればいいわけじゃない。危険な相手を避ける判断も必要だ。
だが、まだ可能性を確かめる前から、自分の都合だけで選別しているとしたらどうだろう。
そこで黒服は何をしている?
何も言わないのか。
何も言えないのか。
それとも、何を言えばいいのかすらわからないのか。
この三つは、似ているようでまったく違う。
だが、現場で起きている結果は同じだ。
本来、店を支えるはずの人間が、必要な役割を果たせていない。
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■ キャストに嫌われるのが怖いのか?
黒服という仕事は、キャストと良好な関係を築くことも重要だ。
信頼されなければ、相談もされない。
話を聞いてもらえなければ、指導も届かない。
だからといって、好かれることが仕事の目的になってはいけない。
言うべきことを言わず、注意すべきことを見過ごし、相手の機嫌を損ねないことばかり考える。
それは信頼関係を築いているんじゃない。
嫌われないために、必要な役割を手放しているだけかもしれない。
キャストが不機嫌になる。反論してくる。店を辞めると言い出す。
そうした反応を恐れて、必要な話し合いさえ避けてしまう。
だが、考えてみてほしい。
その場の空気を守るために問題を放置した結果、店の売上が落ちたらどうする?
ほかのキャストが同じ行動を始めたらどうする?
一人の機嫌を損ねないことが、ほかの従業員や店全体に負担を押しつける結果になったら、それは本当に正しい判断なのか。
全員に好かれようとする人間は、ときに全員に対する責任を果たせなくなる。
黒服に必要なのは、嫌われる覚悟を見せることじゃない。
嫌われる可能性があっても、必要なことを根拠を持って伝えられる力だ。
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■ そもそも、何を指導するつもりなのか?
ここで、もう一つの問題がある。
黒服自身に、指導できるだけの知識や経験があるのかということだ。
ただ「もっと営業しろ」と言う。「もっと頑張れ」と発破をかける。「その接客じゃダメだ」と否定する。
これでは指導とは呼べない。
なぜ、その行動が必要なのか。何を改善すれば結果が変わる可能性があるのか。本人の強みをどう生かせるのか。どこまでが本人の課題で、どこからが店の仕組みの問題なのか。
それを説明できなければ、指導は単なる命令になる。
例えば、客との連絡先交換を避けているキャストがいたとする。
そこで、頭ごなしに「誰とでも交換しろ」と言うのは簡単だ。
だが、本当に見るべきなのは、その判断の中身だ。
危険を感じた相手なのか。接客上の相性を考えた判断なのか。まだ相手を知ろうともせず、目先の金額だけで切り捨てているのか。
理由によって、対応は変わる。
必要なのは、すべてのキャストを同じ型にはめることじゃない。
本人が何を根拠に判断しているのかを確認し、改善できる部分があれば具体的に伝え、結果を一緒に検証することだ。
それができて初めて、黒服は現場を導く立場になれる。
自分に説明できないことを、相手に実行させることはできない。
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■ 黒服だけを責めて、解決する話ではない
では、黒服に指導力があれば、すべて解決するのか。
そうじゃない。
黒服がキャストに必要な話をしようとしても、店長がそれを否定する。
店長が改善を求めても、オーナーがその場の売上や人手不足を優先して、結局は元の状態に戻してしまう。
黒服に責任だけを負わせ、判断する権限は与えない。
問題が起きれば現場の黒服を責める。しかし、何を基準に指導するのか、どこまで判断していいのかは曖昧なまま。
これでは、現場の人間が自分で考え、行動するほど損をする組織になってしまう。
余計なことを言わなければ、責任を問われない。改善を試みなければ、失敗もしない。問題を見つけても、見なかったことにすればいい。
そんな環境で、主体的に動く人間が育つだろうか。
黒服に覚悟を求めるなら、経営側にも覚悟が必要だ。
必要な指導をした人間が、筋の通った理由もなく責められないこと。
判断の基準が明確であること。
責任を負わせるなら、その責任を果たすための権限も与えること。
そして、現場から上がってきた意見に、立場だけで蓋をしないこと。
組織を動かすのは、気合いだけじゃない。人間が役割を果たせる構造が必要なんだ。
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■ キャストの顔色をうかがう組織は、何を失うのか?
一人のキャストに注意できない。一人の黒服が判断できない。一人の店長が責任を取れない。
それぞれを単独で見れば、小さな問題に見えるかもしれない。
だが、それが店全体に広がったらどうなるだろう。
必要な指導が行われない。基準が人によって変わる。真面目に取り組む人間が損をする。問題を改善するより、波風を立てないことが優先される。
やがて、正しいことを言う人間ほど面倒な存在になり、何も言わない人間ほど扱いやすい存在になる。
ここまで来ると、問題は個人の能力だけじゃない。
組織そのものが、問題を解決できない形になっている。
そして、経営者が気づいたときには、売上だけじゃなく、人材も信頼も失われ始めている。
店は人で決まる。
だからこそ、人間関係を壊さないことと、必要な問題に向き合わないことを混同してはいけない。
組織を守るために、何も言わない。
その選択が、結果として組織を壊していくこともある。
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■ 黒服の仕事は、キャストの機嫌を取ることではない
誤解しないでほしい。
黒服は、キャストを支配するためにいるんじゃない。
何でも指示し、従わせ、管理することが優秀さでもない。
キャストにはキャストの考えがある。それぞれに個性があり、得意不得意もある。
その違いを理解し、本人が力を発揮できるように支えることも、黒服の重要な役割だ。
ただし、支えることと、甘やかすことは違う。
相手の話を聞くことと、相手の言い分をすべて受け入れることも違う。
信頼関係を築くことと、嫌われないように振る舞うことも違う。
必要なのは、相手を理解したうえで、伝えるべきことを伝え、店として守るべき基準を守ることだ。
そして、その役割を黒服だけの個人的な力量に依存させないこと。
店長は黒服を育てる。オーナーは店長が判断できる環境をつくる。組織は、誰が担当しても一定の基準で動ける仕組みを持つ。
それぞれが自分の役割を果たしてこそ、店は強くなる。
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■ 最後に、黒服のお前に問いたい
キャストに何も言えない。
その理由は何だ?
嫌われるのが怖いのか。辞められるのが怖いのか。指導する知識がないのか。権限がないのか。それとも、何も言わないほうが自分にとって都合がいいのか。
自分の問題なら、学び、経験を積み、伝える力を磨けばいい。
組織の問題なら、上に伝え、基準や権限を明確にする必要がある。
どちらか一方だけを理由にして、思考を止めてはいけない。
そして、経営者も問われなければならない。
現場に責任を求めるだけで、役割を果たせる環境をつくっているのか。
黒服が何も言えない店で、キャストだけに成長を求めても、限界がある。
キャストが変わらないのか。黒服が変われないのか。店長が機能していないのか。経営者が仕組みをつくっていないのか。
表面に見えている問題だけを叩いても、根は残る。
軍師が見るのは、目の前の一人の失敗だけじゃない。
その失敗が、なぜ繰り返されるのか。誰が役割を果たせず、何がそれを許しているのか。そして、どうすれば人が変わっても機能する組織になるのか。
そこまで見て、初めて本質に届く。
キャストに何も言えない黒服へ。お前は何を恐れている?
そして、黒服が何も言えない店をつくっている経営者へ。
お前は、自分の組織の何を見落としている?
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この記事は、黒服の視点から書いた。
同じ出来事を、キャストの側から見たものもある。お前が指導しようとしている相手が、何を考え、何を恐れているか知りたいなら、こちらも読んでみてほしい。
→「選り好みする前に、まずスタートラインに立て。売れる可能性を自分で潰すキャストたち」

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オマエの目は俺だ!

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